WEKO3
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グループホームの展開\n 調査1.グループホームのバックアップ形態と都道府県分布(全国調査1)\nグループホームの現状を明らかにするために、1997年、全国1,725ヶ所のグループホームについて、都道府県への聞き取り調査を実施した。結果は、(1)国の補助制度によって運営されているグループホーム数は、1991年に地方自治体の補助制度で運営されているグループホーム数を上回り、以後急激に増加している。(2)国の補助制度で運営されているグループホームの内、入所施設がバックアップしているグループホーム数がもっとも多く、以下、通勤寮、通所施設の順となっている。地方自治体の補助制度で運営されているグループホームのバックアップ形態は多様化しており、バックアップしているグループホーム数は支援団体がもっとも多く、通所施設・作業所、入所施設、個人、通勤寮の順である。(3)国の補助制度によって運営されているグループホームは入所施設の利用率が高い県に多く、地方自治体の補助制度で運営しているグループホームは通所施設の利用率が高い県に多い傾向が見られる。\n 調査2.グループホームのバックアップ形態と入居および入居者の特徴(全国調査2)\nバックアップ形態のグループホーム運営に及ぼす影響をさらに明らかにするため、1998年、全国のグループホーム1,833ヶ所に質問紙を郵送し、回答を得た957ホーム(4,031人)の分析を行った。その結果、(1)入居直前の住居は、入所施設がもっとも多く、以下、家庭、通勤寮、その他となっている。グループホームへの入居経路は、入所施設あるいは通勤寮からグループホームへ入居する知的障害者は、入所施設あるいは通勤寮がバックアップするグループホームへ入居する傾向が強く、一方、家庭からグループホームへ入居する知的障害者は、通所施設・作業所がバックアップするグループホームへ入居する人がもっとも多く、以下、支援団体、入所施設、バックアップ体制のないホームの順となっている。(2)バックアップ形態別に見た入居者の特徴は以下の通りである。(以下、「入所施設によるバックアップ」を入所施設援助型と呼ぶ)(1)入所施設援助型のグループホームと通勤寮援助型グループホーム入居者の特徴は類似しており、中高年齢者が多く、知的障害の程度については中度、軽度が多く、入居者の昼間活動は企業就労が多い。週末帰省者は少ない。(2)通所施設、作業所援助型グループホーム入居者の特徴は、前記の入所施設援助型、通勤寮援助型と異なり、年齢的には若く、重度の知的障害をもつ人が多く、昼間の活動先は通所、作業所が多く、また週末に家庭帰省する者が多い。\n 調査3.グループホームにおける重度知的障害者の生活と援助体制(愛知県調査)\n重度の知的障害者のグループホーム入居の状況を検討するため、1995年、愛知県内の39グループホームを対象に質問紙を郵送し、31施設(入居者126人)より回答を得た。重度の入居者は、22ヶ所のグループホームに35人が分散して入居しており、その入居先は、通所施設・作業所援助型のグループホームが多い。知的障害が重度の入居者は、全体としての援助必要度は高いが、その必要性は生活の内容によって異なっている。またグループホーム生活を継続することが困難な者は重度よりも中軽度の入居者に多い。グループホーム入居者に対して生活の質についての評価を行い、各個人のニーズに応じた援助を行う必要がある。\n\n第二部 欧米と日本におけるグループホーム展開の比較\n 第一章 施設入所率に見られる日本の特徴\n施設入所率についてアメリカ合衆国、英国、スウェーデン、ノルウェイ各国と日本の間の比較を行うと、これら欧米の4ヵ国は1970年から1996年まで一貫してその入所率を低下させているのに対し、日本のみがその施設入所率をほぼ直線的に増加させている。また日本は欧米と比較して、人口比に対する入所率が低い。\n 第二章 欧米におけるグループホームの発展\n隔離された大規模収容施設の設立が相次いだ20世紀前半に入所施設を設立し、20世紀後半に地域への移行を果たした国々(アメリカ合衆国、英国、スウェーデン)とノーマライゼーションが広まりつつある1960年代に入所施設を設立し、ほぼ同時期に地域移行を展開した国々(ノルウェイ、オランダ、日本)では、入所施設から地域へ移行するときの、入所施設の役割は異なり、またグループホーム展開の経緯も異なっている。\n(1)アメリカ合衆国、英国、スウェーデンでは、施設入所者数は1970年代から低減し始め、同時期に地域の小規模住居利用者数が増加している。地域の住居利用者数の数は1980年代後半に施設入所者数を越えている。初期には20数名から50数名の規模であった地域の住居が、小規模化し、数名程度の規模のグループホームに近づいた点でも類似している。これらの国々は、知的障害者の地域生活を援助するために法的、財政的施策を推進し、施設閉鎖の方向に向かっている。(2)ノルウェイ、オランダでは、中規模の入所施設が設立され、それらの規模の縮小化、個室化、職員比率の改善などでノーマライズしていく努力がなされた。その後、ノルウェイでは行政全体の地方分権化に伴い入所施設が全廃された。オランダでは、グループホームと類似した住居を施設と地域の隣接地区に設置し、昼間活動を入所施設で行う分館制度を実施している。ノルウェイ、オランダ、日本は、いずれも入所施設を改善したり、入所施設が地域支援を行うなど、入所施設の機能、地域生活支援のあり方に20世紀前半に収容施設を設立した国との違いを見ることができる。\n 第三章 アメリカ合衆国と日本における施設入所者およびグループホーム入居者の特徴\n入所施設入所者の特性をアメリカ合衆国と日本で比較すると、アメリカ合衆国では地域移行が進むにつれて、知的障害が中度、重度の人から最重度の人へと移行し、年齢はより高齢者が多くなり、入所率よりも退所率が高くなり、退所先はグループホームが主流となり、再入所率はいったん高くなった後で減少している。日本では、中度、重度の入所者が多く、年齢も児童あるいは若年齢層の入所者もおり、入所率は退所率よりも高く、退所先は施設間を移動しており、再入所率は一貫して低い。\n\n第三部 日本におけるグループホーム展開の特徴\nグループホームの将来的な方向性に関する提言は以下の通りである。\n1.欧米の国々では入所率の低下とともにグループホーム入居者数が増加している。日本では、入所率、グループホーム入居率どちらも増加しているが、グループホーム利用者数の増加率は著しく低い。日本のグループホームは、「施設福祉」の延長線上で展開し、施設がバックアップする制度によって広まりつつある。そのため、グループホームの改善はバックアップする入所施設、通勤寮あるいは通所施設の制度の改善と連携して行われる必要がある。\n2.日本のグループホーム入居者の約半数は、入所施設がバックアップしているグループホームで生活しており、それらのグループホーム入居者の約8割が入所施設からの移行者である。今後、入所施設から地域への移行者をさらに増加させるためには、グループホーム、入所施設双方の制度の改善を行う必要がある。一方、家庭からのグループホーム入居者は主に通所施設・作業所がバックアップしているグループホームへ入居しているが、グループホーム運営上、週末には帰宅させられている入居者が多い。現在の地域に根ざした活動を継続する一方で、長期的には、職場と住居を分離するための施策を実施することが必要である。支援団体のバックアップ形態の中には、地域内の社会資源とネットワークを組むような新しい動きが見られ、今後の展開が期待される。\n3.バックアップ施設の制度の弊害であるグループホームの偏在性および施設利用者と未利用者とのグループホーム入居の格差を克服するには、サービス提供団体としての施設が地方自治体と連携し、地域における福祉計画、援助システムの充実を計ることが必要である。\n4.グループホームに代表される小規模住居を展開するためには、国の法的、財政的な援助が不可欠であり、それらを強く推進することが必要である。", "subitem_description_language": "ja", "subitem_description_type": "Abstract"}]}, "item_12_description_45": {"attribute_name": "学位授与年度", "attribute_value_mlt": [{"subitem_description": "1999", 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日本におけるグループホームの成立と特質 : 欧米との比較
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B1576.pdf (242.4 kB)
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1.pdf (186.1 MB)
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Item type | Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2007-12-03 | |||||
タイトル | ||||||
言語 | ja | |||||
タイトル | 日本におけるグループホームの成立と特質 : 欧米との比較 | |||||
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言語 | jpn | |||||
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資源 | http://purl.org/coar/resource_type/c_db06 | |||||
タイプ | doctoral thesis | |||||
アクセス権 | ||||||
アクセス権 | open access | |||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_abf2 | |||||
著者 |
渡辺, 勧持
× 渡辺, 勧持 |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | はじめに グループホームは、20世紀後半に知的障害者が隔離された大規模収容施設から地域に移行したときの、地域の小規模住居として各国で展開した。 我が国でも、グループホームは、障害者プラン(1996年)の第一の理念である「地域でともに生活する」ことを実現するための居住サービスの一形態として推進されており、すでに1万人を越す知的障害者がグループホームで生活している。しかし、これらのグループホームの全国的な実態は明らかにされていない。 本論文は、グループホームについて、第一部では日本の形成過程と現状を明らかにし、第二部で日本におけるその展開および現状について欧米との比較を行い、第三部では第一部、第二部の結論に基づいて日本のグループホーム展開の特質を明らかにし、今後の方向性を検討する。 第一部 日本におけるグループホームの成立と特質 第一章 グループホームの萌芽的試行 数人の知的障害者が同じ家で共に生活するための小規模住宅は、すでに1960年代から施設関係者によって自主的に運営されていた。これらは地域に就労した施設入所者、通勤寮卒寮者、あるいは通所施設・作業所の通所者が地域で生活できるようにするための住居として用意されたものであった。このグループホームの前身とも言うべき小規模住居は、その後の補助制度において、「バックアップ施設」の援助をうけて展開した。 第二章 グループホームの展開 調査1.グループホームのバックアップ形態と都道府県分布(全国調査1) グループホームの現状を明らかにするために、1997年、全国1,725ヶ所のグループホームについて、都道府県への聞き取り調査を実施した。結果は、(1)国の補助制度によって運営されているグループホーム数は、1991年に地方自治体の補助制度で運営されているグループホーム数を上回り、以後急激に増加している。(2)国の補助制度で運営されているグループホームの内、入所施設がバックアップしているグループホーム数がもっとも多く、以下、通勤寮、通所施設の順となっている。地方自治体の補助制度で運営されているグループホームのバックアップ形態は多様化しており、バックアップしているグループホーム数は支援団体がもっとも多く、通所施設・作業所、入所施設、個人、通勤寮の順である。(3)国の補助制度によって運営されているグループホームは入所施設の利用率が高い県に多く、地方自治体の補助制度で運営しているグループホームは通所施設の利用率が高い県に多い傾向が見られる。 調査2.グループホームのバックアップ形態と入居および入居者の特徴(全国調査2) バックアップ形態のグループホーム運営に及ぼす影響をさらに明らかにするため、1998年、全国のグループホーム1,833ヶ所に質問紙を郵送し、回答を得た957ホーム(4,031人)の分析を行った。その結果、(1)入居直前の住居は、入所施設がもっとも多く、以下、家庭、通勤寮、その他となっている。グループホームへの入居経路は、入所施設あるいは通勤寮からグループホームへ入居する知的障害者は、入所施設あるいは通勤寮がバックアップするグループホームへ入居する傾向が強く、一方、家庭からグループホームへ入居する知的障害者は、通所施設・作業所がバックアップするグループホームへ入居する人がもっとも多く、以下、支援団体、入所施設、バックアップ体制のないホームの順となっている。(2)バックアップ形態別に見た入居者の特徴は以下の通りである。(以下、「入所施設によるバックアップ」を入所施設援助型と呼ぶ)(1)入所施設援助型のグループホームと通勤寮援助型グループホーム入居者の特徴は類似しており、中高年齢者が多く、知的障害の程度については中度、軽度が多く、入居者の昼間活動は企業就労が多い。週末帰省者は少ない。(2)通所施設、作業所援助型グループホーム入居者の特徴は、前記の入所施設援助型、通勤寮援助型と異なり、年齢的には若く、重度の知的障害をもつ人が多く、昼間の活動先は通所、作業所が多く、また週末に家庭帰省する者が多い。 調査3.グループホームにおける重度知的障害者の生活と援助体制(愛知県調査) 重度の知的障害者のグループホーム入居の状況を検討するため、1995年、愛知県内の39グループホームを対象に質問紙を郵送し、31施設(入居者126人)より回答を得た。重度の入居者は、22ヶ所のグループホームに35人が分散して入居しており、その入居先は、通所施設・作業所援助型のグループホームが多い。知的障害が重度の入居者は、全体としての援助必要度は高いが、その必要性は生活の内容によって異なっている。またグループホーム生活を継続することが困難な者は重度よりも中軽度の入居者に多い。グループホーム入居者に対して生活の質についての評価を行い、各個人のニーズに応じた援助を行う必要がある。 第二部 欧米と日本におけるグループホーム展開の比較 第一章 施設入所率に見られる日本の特徴 施設入所率についてアメリカ合衆国、英国、スウェーデン、ノルウェイ各国と日本の間の比較を行うと、これら欧米の4ヵ国は1970年から1996年まで一貫してその入所率を低下させているのに対し、日本のみがその施設入所率をほぼ直線的に増加させている。また日本は欧米と比較して、人口比に対する入所率が低い。 第二章 欧米におけるグループホームの発展 隔離された大規模収容施設の設立が相次いだ20世紀前半に入所施設を設立し、20世紀後半に地域への移行を果たした国々(アメリカ合衆国、英国、スウェーデン)とノーマライゼーションが広まりつつある1960年代に入所施設を設立し、ほぼ同時期に地域移行を展開した国々(ノルウェイ、オランダ、日本)では、入所施設から地域へ移行するときの、入所施設の役割は異なり、またグループホーム展開の経緯も異なっている。 (1)アメリカ合衆国、英国、スウェーデンでは、施設入所者数は1970年代から低減し始め、同時期に地域の小規模住居利用者数が増加している。地域の住居利用者数の数は1980年代後半に施設入所者数を越えている。初期には20数名から50数名の規模であった地域の住居が、小規模化し、数名程度の規模のグループホームに近づいた点でも類似している。これらの国々は、知的障害者の地域生活を援助するために法的、財政的施策を推進し、施設閉鎖の方向に向かっている。(2)ノルウェイ、オランダでは、中規模の入所施設が設立され、それらの規模の縮小化、個室化、職員比率の改善などでノーマライズしていく努力がなされた。その後、ノルウェイでは行政全体の地方分権化に伴い入所施設が全廃された。オランダでは、グループホームと類似した住居を施設と地域の隣接地区に設置し、昼間活動を入所施設で行う分館制度を実施している。ノルウェイ、オランダ、日本は、いずれも入所施設を改善したり、入所施設が地域支援を行うなど、入所施設の機能、地域生活支援のあり方に20世紀前半に収容施設を設立した国との違いを見ることができる。 第三章 アメリカ合衆国と日本における施設入所者およびグループホーム入居者の特徴 入所施設入所者の特性をアメリカ合衆国と日本で比較すると、アメリカ合衆国では地域移行が進むにつれて、知的障害が中度、重度の人から最重度の人へと移行し、年齢はより高齢者が多くなり、入所率よりも退所率が高くなり、退所先はグループホームが主流となり、再入所率はいったん高くなった後で減少している。日本では、中度、重度の入所者が多く、年齢も児童あるいは若年齢層の入所者もおり、入所率は退所率よりも高く、退所先は施設間を移動しており、再入所率は一貫して低い。 第三部 日本におけるグループホーム展開の特徴 グループホームの将来的な方向性に関する提言は以下の通りである。 1.欧米の国々では入所率の低下とともにグループホーム入居者数が増加している。日本では、入所率、グループホーム入居率どちらも増加しているが、グループホーム利用者数の増加率は著しく低い。日本のグループホームは、「施設福祉」の延長線上で展開し、施設がバックアップする制度によって広まりつつある。そのため、グループホームの改善はバックアップする入所施設、通勤寮あるいは通所施設の制度の改善と連携して行われる必要がある。 2.日本のグループホーム入居者の約半数は、入所施設がバックアップしているグループホームで生活しており、それらのグループホーム入居者の約8割が入所施設からの移行者である。今後、入所施設から地域への移行者をさらに増加させるためには、グループホーム、入所施設双方の制度の改善を行う必要がある。一方、家庭からのグループホーム入居者は主に通所施設・作業所がバックアップしているグループホームへ入居しているが、グループホーム運営上、週末には帰宅させられている入居者が多い。現在の地域に根ざした活動を継続する一方で、長期的には、職場と住居を分離するための施策を実施することが必要である。支援団体のバックアップ形態の中には、地域内の社会資源とネットワークを組むような新しい動きが見られ、今後の展開が期待される。 3.バックアップ施設の制度の弊害であるグループホームの偏在性および施設利用者と未利用者とのグループホーム入居の格差を克服するには、サービス提供団体としての施設が地方自治体と連携し、地域における福祉計画、援助システムの充実を計ることが必要である。 4.グループホームに代表される小規模住居を展開するためには、国の法的、財政的な援助が不可欠であり、それらを強く推進することが必要である。 |
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言語 | ja | |||||
書誌情報 |
発行日 2000 |
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取得学位 | ||||||
学位名 | 博士(心身障害学) | |||||
取得学位 | ||||||
学位名 | Doctor of Special Education | |||||
学位授与大学 | ||||||
学位授与機関識別子Scheme | kakenhi | |||||
学位授与機関識別子 | 12102 | |||||
言語 | ja | |||||
学位授与機関名 | 筑波大学 | |||||
言語 | en | |||||
学位授与機関名 | University of Tsukuba | |||||
学位授与年度 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 1999 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2000-01-31 | |||||
報告番号 | ||||||
学位授与番号 | 乙第1576号 |