@phdthesis{oai:tsukuba.repo.nii.ac.jp:00008344, author = {秋山, 亨 and Akiyama, Toru}, month = {}, note = {結晶中には必ず不完全性が存在する。原子が消失してできる原子空孔,余分に存在する格子間原子,母体結晶と異なる元素が侵入した不純物原子,などが例として挙げられる。これらの点欠陥は濃度としては極めて低いものであるが,母体結晶の物性を大きく左右することが良く知られている。特に半導体における点欠陥は,母体半導体のエネルギーギャップ中にしばしば電子準位を引き起こし,この電子準位は母体の電気的,光学的性質を決定づけている。従って半導体中の点欠陥の研究は,現在まで盛んに行われ,各点欠陥の原子構造,電子準位などについての知見が集積している。しかし,最近の半導体微細化に伴い,原子空孔の集合体(多原子空孔)の存在が確実なものとなってきているが,この多原子空孔の微視的構造に関しては殆ど何の知見も得られておらず,半導体科学における残された大きな課題となっている。 本論文の目的は,計算物理学の手法によるミクロスコピックな理論計算により,代表的半導体であるシリコン結晶中の多原子空孔の安定性,微視的構造,電子状態を明らかにし,また不純物原子の代表である水素原子,分子との相互作用の形態を明らかにすることである。理論手法としては,量子力学の第一原理に立脚した密度汎関数法が用いられている。これは,電子同士の相互作用を量子論的効果である,交換相互作用および相関相互作用のレベルまで考慮することができる理論手法であり,実際の物質の構造的性質,安定性を精度よく求めることが可能である。本論文では密度汎関数法の局所密度近似および更に進んだ一般化密度勾配近似が使われており,その精度についても詳しい議論がなされている。 本論文では,まず多原子空孔を負のクラスターとして捉え,安定なサイズ(魔法数)が決定されている。計算により6原子空孔V6,10原子空孔V10が他のサイズに比べて安定に存在することが明らかとなった。この魔法数の決定には,空孔によって生じたダングリング・ボンドの数と,周囲原子の格子緩和が重要であることが示されている。さらに格子緩和の原子スケールでの詳細が明らかにされ,今まで知られていた単原子空孔周囲の格子緩和との違いが明確にされた。さらに,単原子空孔で見られている,ヤーンテラー効果による格子緩和だけでなく,電子同士の交換相互作用によるスピン偏極に伴うエネルギーの利得の可能性が初めて指摘された。実際にV10について計算が実行され,シリコン結晶中の原子空孔は高スピン状態を取ることが見出された。またその交換相互作用により,負の電子相関の系であることも初めて指摘されている。 また本論文では,水素原子及び分子は原子空孔中に捕獲されることが明らかとなった。水素原子は原子空孔中のダングリング・ボンドを終端して安定化し,さらにその水素で修飾された多原子孔に水素分子が捕獲されることが見出された。これらは本研究によって初めて明らかになったものである。 さらに本研究では,水素を収容した多原子空孔に起因する,局在振動モードの計算が行われている。単原子空孔,複原子空孔,V6,V10等に捕獲された水素分子振動モードが系統的に計算され,多原子空孔内のスペースの大小により,振動数が系統的に変化することが見出された。その計算結果により,最近の赤外線吸収実験,ラマン散乱実験のデータが定量的に説明されている。, 2001, Includes bibliographical references}, school = {筑波大学, University of Tsukuba}, title = {Theoretical study on the microscopic structure and hydrogen decoration of the multivacancy in crystallin silicon}, year = {2002} }