@phdthesis{oai:tsukuba.repo.nii.ac.jp:00008306, author = {神谷, 充伸 and Kamiya, Mitsunobu}, month = {}, note = {広塩性紅藻アヤギヌ属(Caloglossa)は,熱帯・亜熱帯の河口マングローブ域に群落を形成するほふく性の小形藻である。従来この属の分類は外部形態をもとになされてきたが,なかでもCaloglossaleprieuriiは広く世界に分布し,形態変異の著しい種としても知られ,天然の藻体形態に依る分類には問題があることが指摘されてきた。形態が遺伝的に固定されているものか,単に環境に条件の影響によるものかを見極めることは困難である。また,水界を主な生育場所とする藻類は生物地理学的研究が進んでいない分野である。アヤギヌ属藻類はマングローブ植物に付着して生育するので,分布が把握し易い。そこで,本研究はC.lepriuriiとC.continuaを世界各地から採集し,培養,交配実験,分子(DNA)解析などの実験手法を用いて,集団間/内における形態の相違,生殖的隔離の有無,DNA塩基配列の差異など,生物を多面的に解析し,天然藻体に依拠した従来の分類体系の再検討と,この藻類の分化・分散,現在の分布に至った生物地理学的解析を行ったものである。得られた成果を要約すると,以下の通りである。 1.C.continuaとC.lepriuriiを日本(日),シンガポール(シ),オーストラリア(オ),南アフリカ(ア),ベネズエラ(べ)から採集し,培養実験(種々の温度,塩濃度条件)により,諸種の形態・組織学的形質(例えば,測軸第中軸細胞に生じる細胞列の有無,仮根の生じる位置,その他)の可塑性を比較解析し,仮根の形状以外の形質は安定であり,天然,培養いずれでも明確に区別できることを明らかにした。 2.日,シ,オ産C.continuaと日,シ,オ,ア,べ産C.lepriuriiの培養株で交配実験を行なったところ,採集起源の違いにかかわらず嚢果の形成(すなわち,生殖の成立)は起こらなかった。また,C.continuaには,日,シ,オ株のどの組合せにおいても生殖は起こらず,C.lepriuriiの日・西オ交配群,東オ交配群(以上細胞列数―藻体幅が単列―幅広型),ア・べ交配群,シ交配群(以上,多列―幅広型),日・シ交配群(多列―幅細型)がみとめられたが,異なる形態型の株間での嚢果の形成は起こらなかった。 3.Rubiscoの大サブユニットおよびスペーサー領域のDNA塩基配列(134bp)を決定し,近隣結合法により分子系統樹を作成し,次の結論を得た;(1)同じ交配群に属するものは近縁である,(2)C.continuaおよびC.lepriuriiはともに単系統群である,(3)C.continuaでは,先ずオーストラリア交配群が分化し,ついで日本交配群とシンガポール交配群が分化した,(4)C.lepriuriiにおいて,単列―幅広型は原始形質である。 以上により,C.continuaとC.lepriuriiの安定した形態的差異,生殖的隔離及び単系統性は両種がそれぞれ独立した種であることを明らかにした。また,日とシのC.continuaの遺伝的近縁性は,初めに両者の生理特性の違いが不連続分布の原因となり,その後両者に生殖隔離と形態的差異が急速に発達した可能性が示唆される。C.lepriuriiでは,インド洋/西太平洋域において単列―幅細型群から多列―幅広型群が生じ,そこから多列―幅広型群が世界各地に分散したことを示唆している。多列―幅細型群は,インド洋/西太平洋で多列―幅広型群から分化し,黒潮海流にのって日本海域に分布を広げたことを強く示唆している。 The systematic and biogeographic studies were carried out on Caloglossa leprieurii (Montagne) J. Agardh (Delesseriaceae, Ceramiales) and its related species C.Continua (Okamura) King et Puttock, which are representative euryhaline red algae growing abundantly in mangrove regions. ..., 1994}, school = {筑波大学, University of Tsukuba}, title = {Systematic studies on the red algae of the genus Caloglossa (Delesseriaceae, Ceramiales)}, year = {1995} }