@phdthesis{oai:tsukuba.repo.nii.ac.jp:00008302, author = {松崎, 治 and Matsuzaki, Osamu}, month = {}, note = {嗅覚の生理学的研究は,他の感覚系のそれに比して遅れている。本論文は末梢嗅覚系レベルにおける匂分子識別機構の生理学的解明のために,その基盤となる嗅細胞の数や,種類による微細構造の相違を電顕レベルで正確にしらべると共に,嗅神経束の微細構成要素を追究した。また嗅細胞のインパルス数と匂分子の相関をしらべ,末梢レベルから嗅球に伝達される総情報量を推定した。 陸生脊椎動物の中から4綱16種をえらんだ。それらの嗅細胞は,その軸索と一対一に対応し,軸索は分枝せずに嗅球に達することから,嗅神経線維束の電顕による軸索の断面を数えることによって嗅細胞の概数を算定した。 嗅細胞の軸索の束である嗅神経では,嗅神経の最外側を取り巻く神経上膜と,その内側で軸索を多数の神経束にまとめる神経周膜を区別できた。しかし軸索を数本の小束に束ねるべき神経内膜は正常な膜としての形態をもっていないことが多かった。従ってシュワン細胞に包まれた軸索の束が,ほぼ最小単位の小束に対応すると考えられる。軸索には,細胞内器官として糸粒体・神経細管・神経細糸などが含まれていた。軸索の直経は約0.2μmでほぼ種類による差はなかった。 各動物の片側の嗅粘膜内の嗅細胞数は,例えば,シロネズミ,170万,ハト,300万,ヨツユビガメ,750万,ウシガエル,390万,イモリ,40万個であった。しかし個々の嗅細胞の感度や匂物質の種類に対する応答差などから,一概に嗅細胞数の多少が嗅覚の鋭敏さを決定するとは言えないようであった。なお鋤鼻器官の嗅細胞数については,陸ガメでは嗅粘膜の嗅細胞数の一割にも満たなかった。一方水中で採餌することの多いクサガメなどでは,その数は嗅粘膜の嗅細胞数と同様か,むしろ多かった。このことはカメ類の鋤鼻器官の機能について一つの示唆を与えるものと思われる。 また個々の嗅細胞の感度をヨツユビガメで調べた。各濃度の匂気体に含まれる匂分子数をガスクロマトグラフで実測し,一方各濃度の匂刺激に対する単一嗅細胞応答を記録した。その結果,酢酸n-アミル気体の10[-25]と10[-3]との差を一個の嗅細胞が検出するには,約1.6×10[7]/secの匂分子数の増加が必要であった。 末梢嗅覚系における匂識別機構については,ある系列の匂分子が嗅粘膜上に嗅細胞興奮の空間的時間的パターンを形成することによるという説が議論されてきた。これは嗅粘膜の機能をガスクロマトグラフにたとえるものである。嗅神経の神経束分枝から匂刺激による応答を記録した結果,一神経束分枝でも各種の匂物質によく応答し,また各分枝問で閾値濃度が異なった。さらに個々の嗅細胞の応答についても同様の結果がみられた。このことから嗅粘膜のガスクロマトグラフ的作用は大きな分析能カをもつと思われる。嗅細胞の軸索は無髄線維であり,シュワン細胞に包まれた軸索間では各形質膜が近接していることから,神経情報の伝導には相互に干渉がおこると考えられる。すなわち伝導単位としての小束全体に興奮がひろがり,複数個の嗅細胞が興奮したのと同じ効果を生ずる,一本の小束が投射する嗅細胞群は,generalist的に機能するが,小束の単位でかなり広い濃度変化に対応できる機構をもっている。, 1982}, school = {筑波大学, University of Tsukuba}, title = {Morpho-physiological studies on the olfactory receptor cells and the olfactorynerve fibers in terrestrial vertabrates}, year = {1983} }