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Faster than Light II
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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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アインシュタイン.pdf (269.1 kB)
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Item type | Others(1) | |||||||||||
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公開日 | 2011-11-22 | |||||||||||
タイトル | ||||||||||||
言語 | en | |||||||||||
タイトル | Faster than Light II | |||||||||||
言語 | ||||||||||||
言語 | jpn | |||||||||||
資源タイプ | ||||||||||||
資源 | http://purl.org/coar/resource_type/c_1843 | |||||||||||
タイプ | other | |||||||||||
アクセス権 | ||||||||||||
アクセス権 | open access | |||||||||||
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著者 |
西村, 泰一
× 西村, 泰一
WEKO
123
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抄録 | ||||||||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||||||||
内容記述 | 現在の宇宙に関する標準理論によると、我々の宇宙はBig Bangで始まったことになる。 約137億年前の話である。このBig Bangの話を最初に提唱したのはベルギー出身の Catholic司祭でもあった宇宙物理学者のGeorges-Henri Lemaïtreである。1927年の話 である。この頃は、宇宙は定常、つまり昔も今も同じで変化していないという考え方が 支配的で、重力場の方程式を導いたEinsteinなんかも、これでは宇宙は膨張しているこ とになると思って、大慌てで後に"人生最大の失敗“と後悔することになる宇宙定数を 加えている。因みに今では人口に膾炙しているBig Bangという用語もLemaïtre自身に よるものではなく、定常宇宙論の大御所ともいうべきSir Fred Hoyleによるもので、彼 が、1949年3月28日にBBCのラジオ番組で、どちらかというと侮蔑的に呼んだその用語を (大きなバーン)、Big Bang理論の擁護者であるGeorge Gamovが面白がって広めたも のである。Lemaïtre自身はCosmic Egg(宇宙の卵)というきわめて控えめな表現を用い ている。なお余談であるが、ローマ教皇Pius XIIが1951年にCatholic ChurchはBig Bang理論を認めるという声明を唐突に発表する。Darwinが19世紀半ばに発表した進化論 を、Catholic Churchが認めるのに、20世紀末までかかったのとは、鋭い対照をなす。 これはBig Bangが宇宙の創造という聖書の記述と相性が良いためである。もっとも Lemaïtre自身は、Catholicの司祭であるにもかかわらず、こういう話に教皇が口を出 すことを控えてほしいと、直々に進言している。なんとも控えめなLemaïtreらしい話 である。 ☆☆☆ 宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Background radiation略してCMB)は GamovやRalph Asher Alpherらによって1940年代に既に予言されていたが、そんなこと は露ほども知らない畑違いのアメリカ合衆国のBell研究所の二人の研究者、Arno Allan PenziasとRobert Woodrow Wilsonによって、1964年、超感度アンテナの雑音を減らす研 究中に偶然発見された。これはBig Bangから約40万年後に、電子と陽子が結合して水素 原子を生成して光が解放された時期、いわゆるTransparent to Radiation(宇宙の晴れ 上がり)のSnapshotであると考えられている。宇宙の晴れ上がり以前は、高温の自由陽 子と自由電子のPlasmaによって光は散乱され、不透明な宇宙の霧をなしていた。この CMBは、光の化石とでも呼ぶべき代物で、宇宙の膨張によって波長が著しく引き伸ばさ れたために、もはや可視光として見ることはできないが、マイクロ波放射として当時の 面影を今に伝えている。これを具に見ることで当時の宇宙の温度がわかるが、この若い 宇宙の温度は、天空全体にわたって驚くほど均一で、約3000K だったと推定される。ま たこれらと他の宇宙論的Dataを総合することで、奇抜なことを期待する向きにはあまり 面白くない話かもしれないが、宇宙は平坦、つまりその曲率は0であることがわかって いる。 ☆☆☆ こうして地平線問題とか平坦性問題が頭をもたげてくる。地平線問題というのは、すべ ての情報は光より速くは伝わらないのに、どういうMechanismで、かくも広大な宇宙の 温度が均一になったのかという問題である。平坦性問題というのは、曲率が正か負か0 かという話は、全Energy密度が臨界密度を上回るか、下回るか、あるいは臨界密度にち ょうど一致するかに依るが、どうして全Energy密度が臨界密度にちょうど等しくなるよ うに見事に調節されたのかという問題である。標準的な宇宙論では、これらの問題は Inflation理論を用いて解決される。Inflation理論はアメリカのAlan Guthと日本の佐 藤勝彦によって1980年頃にほぼ同時に見出された理論であるが、Inflation理論という かなり奇抜なNamingはGuthによるものである。Inflationというのは、宇宙の誕生間も ない頃に宇宙が指数関数的な急激な膨張をしたという話で、確かにこれで地平線問題と か平坦性問題は片付くのだが、問題はこのInflationを引き起こしたMechanismである。 単一のInflation理論があるわけではなく、次から次へと色々なInflation理論が作られ 、それなりに精緻になってきていることは間違いないが、これらすべてについて基本的 な問題をかかえている。まずInflation理論というのは、物質の根源を探求する素粒子 論の理論でもなければ、それから必然的に導かれる理論でもない。唯唯、Inflationが ないと、とにかく困るので、それを正当化するために作られた理論である。Inflation を引き起こすのは、Inflatonと呼ばれる仮想上の粒子であるが、これはこれまでに観測 されたことはない。いずれにしても、この粒子の質量はきわめて小さいので、観測の仕 様がない。次に、InflationのためにEinsteinが人生最大の失敗といった宇宙定数によ る斥力が必要になるのだが、現在の宇宙定数は、平坦なEuclideanな宇宙を生成させる のにちょうどいい値をとっているが、初期の宇宙ではこの定数がものすごく大きくない と、Inflationなんかは生じない。この宇宙定数の変化がどうして起きたのかも謎であ る。さらに、Inflationに関するPotential Energyが、かなり長時間一定に維持されな いと、地平線問題とか平坦性問題を解決してくれるぐらいのInflationが生じないこと もわかっているが、このためには物理を不自然と言えるまでに微調節する必要がある。 これもかなり苦しい。 ☆☆☆ 最近、Moffatという学者の”重力の再発見”(早川書房、2009年刊)という本をReview する機会に恵まれた。著者は、1992年に光速が相転移によって変化すると考えることに よって、Inflationを仮定しなくても、地平線問題とか平坦性問題を解決できるという 考えに到達している。光速は、現在では1秒当たり約30万kmであるが、初期宇宙のよ うなきわめて高温の世界では、これの10の29乗倍くらい大きかったというのだ。我々の 日常の世界でも、光が水面に当たると、減速して方向が変わるが、これに近いことを温 度による相転移に担わせてしまおうという考えだ。つまり光の速度は温度の関数、しか も不連続な関数となる。こうしてやると、地平線が完全に取り払われて、宇宙全体を見 渡せるようになり、地平線問題は消滅する。さらに光速が超光速から現在の光速に急減 少したことで平坦性問題も解決できる。要するに、光速の相転移に、Inflationに相当 するScenarioを担わせてしまおうという考え方だ。同じような考え方にMagueijoも到達 し、こちらも一般向きに“光速より速い光”(NHK出版、2003刊)を出版している。こ こでは、この”光より速く”を美術として表現してみた。IではMoffat、IIでは Einsteinに御登場願っている。 |
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言語 | ja | |||||||||||
書誌情報 |
発行日 2011 |