{"created":"2021-03-01T07:03:58.652655+00:00","id":25820,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"6d4f6f95-5831-4232-bf8d-9a0c75ea46ef"},"_deposit":{"created_by":188,"id":"25820","owners":[188],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"25820"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:tsukuba.repo.nii.ac.jp:00025820","sets":["117:478","3:2651:2653"]},"author_link":["123"],"item_7_biblio_info_6":{"attribute_name":"書誌情報","attribute_value_mlt":[{"bibliographicIssueDates":{"bibliographicIssueDate":"2011","bibliographicIssueDateType":"Issued"}}]},"item_7_description_4":{"attribute_name":"抄録","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"現在の宇宙に関する標準理論によると、我々の宇宙はBig Bangで始まったことになる。\n約137億年前の話である。このBig Bangの話を最初に提唱したのはベルギー出身の\nCatholic司祭でもあった宇宙物理学者のGeorges-Henri Lemaïtreである。1927年の話\nである。この頃は、宇宙は定常、つまり昔も今も同じで変化していないという考え方が\n支配的で、重力場の方程式を導いたEinsteinなんかも、これでは宇宙は膨張しているこ\nとになると思って、大慌てで後に\"人生最大の失敗“と後悔することになる宇宙定数を\n加えている。因みに今では人口に膾炙しているBig Bangという用語もLemaïtre自身に\nよるものではなく、定常宇宙論の大御所ともいうべきSir Fred Hoyleによるもので、彼\nが、1949年3月28日にBBCのラジオ番組で、どちらかというと侮蔑的に呼んだその用語を\n(大きなバーン)、Big Bang理論の擁護者であるGeorge Gamovが面白がって広めたも\nのである。Lemaïtre自身はCosmic Egg(宇宙の卵)というきわめて控えめな表現を用い\nている。なお余談であるが、ローマ教皇Pius XIIが1951年にCatholic ChurchはBig\nBang理論を認めるという声明を唐突に発表する。Darwinが19世紀半ばに発表した進化論\nを、Catholic Churchが認めるのに、20世紀末までかかったのとは、鋭い対照をなす。\nこれはBig Bangが宇宙の創造という聖書の記述と相性が良いためである。もっとも\nLemaïtre自身は、Catholicの司祭であるにもかかわらず、こういう話に教皇が口を出\nすことを控えてほしいと、直々に進言している。なんとも控えめなLemaïtreらしい話\nである。\n☆☆☆\n宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Background radiation略してCMB)は\nGamovやRalph Asher Alpherらによって1940年代に既に予言されていたが、そんなこと\nは露ほども知らない畑違いのアメリカ合衆国のBell研究所の二人の研究者、Arno Allan\nPenziasとRobert Woodrow Wilsonによって、1964年、超感度アンテナの雑音を減らす研\n究中に偶然発見された。これはBig Bangから約40万年後に、電子と陽子が結合して水素\n原子を生成して光が解放された時期、いわゆるTransparent to Radiation(宇宙の晴れ\n上がり)のSnapshotであると考えられている。宇宙の晴れ上がり以前は、高温の自由陽\n子と自由電子のPlasmaによって光は散乱され、不透明な宇宙の霧をなしていた。この\nCMBは、光の化石とでも呼ぶべき代物で、宇宙の膨張によって波長が著しく引き伸ばさ\nれたために、もはや可視光として見ることはできないが、マイクロ波放射として当時の\n面影を今に伝えている。これを具に見ることで当時の宇宙の温度がわかるが、この若い\n宇宙の温度は、天空全体にわたって驚くほど均一で、約3000K だったと推定される。ま\nたこれらと他の宇宙論的Dataを総合することで、奇抜なことを期待する向きにはあまり\n面白くない話かもしれないが、宇宙は平坦、つまりその曲率は0であることがわかって\nいる。\n☆☆☆\nこうして地平線問題とか平坦性問題が頭をもたげてくる。地平線問題というのは、すべ\nての情報は光より速くは伝わらないのに、どういうMechanismで、かくも広大な宇宙の\n温度が均一になったのかという問題である。平坦性問題というのは、曲率が正か負か0\nかという話は、全Energy密度が臨界密度を上回るか、下回るか、あるいは臨界密度にち\nょうど一致するかに依るが、どうして全Energy密度が臨界密度にちょうど等しくなるよ\nうに見事に調節されたのかという問題である。標準的な宇宙論では、これらの問題は\nInflation理論を用いて解決される。Inflation理論はアメリカのAlan Guthと日本の佐\n藤勝彦によって1980年頃にほぼ同時に見出された理論であるが、Inflation理論という\nかなり奇抜なNamingはGuthによるものである。Inflationというのは、宇宙の誕生間も\nない頃に宇宙が指数関数的な急激な膨張をしたという話で、確かにこれで地平線問題と\nか平坦性問題は片付くのだが、問題はこのInflationを引き起こしたMechanismである。\n単一のInflation理論があるわけではなく、次から次へと色々なInflation理論が作られ\n、それなりに精緻になってきていることは間違いないが、これらすべてについて基本的\nな問題をかかえている。まずInflation理論というのは、物質の根源を探求する素粒子\n論の理論でもなければ、それから必然的に導かれる理論でもない。唯唯、Inflationが\nないと、とにかく困るので、それを正当化するために作られた理論である。Inflation\nを引き起こすのは、Inflatonと呼ばれる仮想上の粒子であるが、これはこれまでに観測\nされたことはない。いずれにしても、この粒子の質量はきわめて小さいので、観測の仕\n様がない。次に、InflationのためにEinsteinが人生最大の失敗といった宇宙定数によ\nる斥力が必要になるのだが、現在の宇宙定数は、平坦なEuclideanな宇宙を生成させる\nのにちょうどいい値をとっているが、初期の宇宙ではこの定数がものすごく大きくない\nと、Inflationなんかは生じない。この宇宙定数の変化がどうして起きたのかも謎であ\nる。さらに、Inflationに関するPotential Energyが、かなり長時間一定に維持されな\nいと、地平線問題とか平坦性問題を解決してくれるぐらいのInflationが生じないこと\nもわかっているが、このためには物理を不自然と言えるまでに微調節する必要がある。\nこれもかなり苦しい。\n☆☆☆\n最近、Moffatという学者の”重力の再発見”(早川書房、2009年刊)という本をReview\nする機会に恵まれた。著者は、1992年に光速が相転移によって変化すると考えることに\nよって、Inflationを仮定しなくても、地平線問題とか平坦性問題を解決できるという\n考えに到達している。光速は、現在では1秒当たり約30万kmであるが、初期宇宙のよ\nうなきわめて高温の世界では、これの10の29乗倍くらい大きかったというのだ。我々の\n日常の世界でも、光が水面に当たると、減速して方向が変わるが、これに近いことを温\n度による相転移に担わせてしまおうという考えだ。つまり光の速度は温度の関数、しか\nも不連続な関数となる。こうしてやると、地平線が完全に取り払われて、宇宙全体を見\n渡せるようになり、地平線問題は消滅する。さらに光速が超光速から現在の光速に急減\n少したことで平坦性問題も解決できる。要するに、光速の相転移に、Inflationに相当\nするScenarioを担わせてしまおうという考え方だ。同じような考え方にMagueijoも到達\nし、こちらも一般向きに“光速より速い光”(NHK出版、2003刊)を出版している。こ\nこでは、この”光より速く”を美術として表現してみた。IではMoffat、IIでは\nEinsteinに御登場願っている。","subitem_description_language":"ja","subitem_description_type":"Abstract"}]},"item_access_right":{"attribute_name":"アクセス権","attribute_value_mlt":[{"subitem_access_right":"open 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